令和4年度 新潟青陵高等学校 卒業式 校長式辞
校歌に歌われる「松の色濃き青春の陵(おか)」や残雪の遠くの山々の風景にも,厳しかったこの冬の終わりを感じさせ,いよいよ躍動の春を迎えようとしています。
本日,ここに新潟青陵高等学校卒業証書授与式を挙行するに当たり,御多用のところ,新潟青陵学園 理事長 篠田昭様,新潟青陵高等学校PTA会長 橘厚様,同窓会長 斉藤香矢子様,ほか多数のご来賓の皆様のご臨席を賜りましたこと,厚く御礼申し上げます。
ただいま,皆さんに卒業証書をお渡しいたしました。卒業おめでとう。心からお祝いいたします。
本校は,いまから123年前の明治33年,西暦1900年に創立しました。昭和23年に学制改革により,新潟女子工芸高等学校が誕生しましたが,そこから数えて本日の卒業式は73回目となります。この長い歴史の中で,皆さんが卒業証書を手にされたことは,皆さん自身の喜びであると同時に,小さな頃から成長を見守ってこられたご家族の皆様,直接間接支えてくださった地域の皆様,そして私たち教職員の喜びでもあります。どうか,今日のこの感激を忘れることなく,自信と誇りを持って今後の人生を歩んでください。
さて,皆さんが活躍するのは,通信技術とコンピュータの飛躍的な発達を背景とした情報社会(Society 4.0),これをはるかに超える新たな社会であり,この社会は Society 5.0とよばれています。仮想空間と現実空間を高度に融合させたシステムにより,経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会になることが期待されており,人工知能(AI)により,必要な情報が必要なときに提供されるようになり,少子高齢化,地方の過疎化,貧富の格差などの課題が克服されると言われています。
こうした新しい,しかし,未知の時代を生きる皆さんにとって,生活がどんなに便利になろうとも,自分の人生をどう歩んで行くかは,あいかわらず一番大きな心の問題だと思います。
そもそも私たちは,人と人の間に生まれ,人と人の間で育ち,いつの時代でも人のために生きる存在です。人に優しくできるためには,まず自分が豊かで幸せになることが大切です。
20世紀イギリスの哲学者バートランド・ラッセルは,著書「幸福論(The Conquest of Happiness)」の中で,幸せについて,次のように述べています。
「幸福とは,非常にまれな場合をのぞいて,何もしなくても,口の中に熟したおいしい果物が落ちてくる,というものではない。」 続けて,
「幸福は,大多数の人にとって,神からのおくりものであるというよりは,努力の結果である。」
つまり,ラッセルは,幸せは必ず努力の先にあるものだと述べています。
卒業生の皆さん,人生は順調な日ばかりではありません。これから,思いどおりにならないことも少なくないと思います。しかし,困難に行き当たったとき,それを乗り越え,求めるものに向かって努力する姿に,その人の生き方が映し出されるものです。ゆっくりでも,失敗しても,一歩ずつ自らの信じた道,正しい道を歩んでほしいと思います。
最後になりましたが,保護者の皆様,ご家族の皆様には,お子さんとともに歩み,3年間を支えてくださったこと,本校に御支援と御協力を賜りましたことに心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
自らの将来を切り拓くという決意と,幸せになるという希望を胸に,校訓「至誠」の精神,どこまでも誠実に生きるということを忘れることなく,着実に歩みを進めてくれることを祈念し,式辞といたします。
皆さん,卒業おめでとう。
令和5年3月1日
新潟青陵高等学校長
石 井 充