厳しかった冬が終わり,信濃川の河畔を彩る桜も開花し,春爛漫のときを迎えようとしている今日のよき日,ご多用の中,新潟青陵学園 理事長 篠田 昭様,新潟青陵高等学校保護者会会長 佐藤 和人様のご臨席を賜り,ここに令和7年度新潟青陵高等学校入学式を挙行できますことは,このうえない慶びであります。
さて,いまほど入学を許可いたしました231人の皆さん,入学おめでとう。
新入生の晴れやかな姿を見守るために,ご臨席を賜りましたことに,厚くお礼申し上げます。
保護者の皆様,ご家族の皆様,おめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。
新潟県内に公立私立合せて102校,全国にはおよそ4800校の高等学校がありますが,皆さんは,その中からこの新潟青陵高等学校に進学することを選びました。皆さんのこの選択が未来に向けて大きな飛躍になるよう学校として応援します。
同時に,皆さんも,自分の学校選択に責任を持って,自らを高めていくために努力を怠らないようにしてください。
本校は,創立125年目を迎える私立高校ですが,本校教育の基本はステージの上に掲げてある「至誠」という2文字に集約されます。これは,この上ないまこと,最上級の誠実さという意味です。幕末の思想家であり教育者でもあった,吉田松陰は,日本の夜明けとなった明治維新に活躍した人物に大きな影響を与えました。自らは志半ばで夭折しましたが,その精神は弟子であり,のちに内閣総理大臣となる伊藤博文や山県有朋らに引き継がれ,日本の近代国家形成につながりました。その吉田松陰は,「至誠にして動かざるものは未だこれ有らざるなり」と述べています。まごころをつくして人に接すれば必ずやその誠意を伝えることができ,人は変わっていく,という意味です。新入生の皆さんにも,この「至誠」の精神を大切にして学校生活を送ってほしいと思います。
さて,これから高校生活がスタートするにあたり大切な心構えについてひとつだけお話しします。
北海道に植松電機という小さな会社があり,その社長さんに植松努さんという方がおられます。テレビドラマ「下町ロケット」の主人公のモデルになった人と言われています。実際に,植松社長は,従業員20人の小さな町工場で宇宙ロケットを作り,日本中の人たちを驚かせました。しかし,ロケットを作りはじめたときは,周りから素人がロケットを作るなんて無理でしょう,資金はどうするの,技術はあるの,どうせ無理でしょう,と何度も言われたそうです。植松社長は,人間の自信をつぶしてしまうのは,この「どうせ無理」という呪文だと述べています。「どうせ無理」と言って何もしない,チャレンジしない,「どうせ無理」と言って夢を持って頑張っている人を笑いものにする,こういう人はびっくりするほど多いというのです。
また,子どもへの愛情から「どうせ無理」と言って,子どもの夢や挑戦を諦めさせる親も少なくないのだそうです。挑戦しなければ失敗もしないので,子どもは傷つかないですむと考えるのでしょうか。
では,どうしたら「どうせ無理」という呪文をはね返して,自分に自信が持てるようになれるのでしょうか。植松社長は,自分と周りの人を比べないこと,夢はたくさん持つこと,人に優しくすること,好きなことをやり続けることを勧めています。また,わからないことを「わからない」と言う勇気を持つことや相手ができないことをしてあげる人になろう,とアドバイスしています。
世界は皆さんが思っている以上に広く,皆さんの人生はこれから思った以上に長いのです。皆さんが選んだこの高等学校で,先生や友人と関わりながら,夢と自信を育み,自分の将来につなげてもらいたいと願っています。
最後に,保護者の皆様,ご家族の皆様に申し上げます。新入生であるお子様にとってこれからの高校3年間は,新しい自分を発見し,大人としての自分の将来像を描く自立への旅となります。その途上は,苦しいことにも直面することでしょう。そんなときには,人生の先輩として,ご家庭で,あるときは厳しく,あるときは冷静に,またあるときは温かく,見守って適切な助言をお願いいたします。学校では,私たち教職員全員,本日入学を許可いたしました231人の生徒諸君の教育に全力をあげることをお約束いたします。
新入生の皆さんが,今日の決意を忘れることなく,充実した高校生活を過ごし,立派に成長されることを願って,式辞といたします。
令和7年4月7日
新潟青陵高等学校長
石井 充
